「怪談軒凝斎」
凝斎は
怪談をタネにしてめしを食っている男
ドロドロドロ
太鼓が鳴り渡り
黒髪をふり乱した女が
両手をだらりと胸のあたりに垂れ
長い裾を曳き摺って
足がない
うらめしや
凝斎先生
どこかで一席ぶっての帰り道
御祝儀で一ぱいやり
酔っぱらった挙句
駅の階段をふみはずし
膝小僧から血を出した
辛い
膝小僧の皿は割れずにすんだが
凝斎の背を
ポンと押した
見えない手があったようだと
まことしやかに
おっしゃいまする
ヒュー
ドロドロドロ
(詩集・業より)