毎日小学生新聞(2005年8月28日掲載)

こわくて美しい”日本のホラー”

中川信夫監督の名作「東海道四谷怪談」

「リング」シリーズ、「呪怨」「仄暗い水の底から」・・・・・ハリウッドで次々とリメークされ、
海外でも注目を集めている日本のホラー(怪談)映画。
その原点を作り出した”ホラー映画の巨匠”の一人、中川信夫監督が今年で生誕100
年を迎えました。
そこで、中川監督の代表作「東海道四谷怪談」をはじめ、”怪談”をテーマに映画監督
の鈴木健介さんに語ってもらいました。


出世のために妻お岩の毒殺をはかった伊右衛門は、ついに死んでしまったお岩の怨霊
にとりつかれ・・・・・という「東海道四谷怪談」は、江戸時代後期に活躍した歌舞伎狂言
の作者、鶴屋南北(1755〜1829年)が書きました。

これまで多くの人が映画化してきたなか、中川監督の「四谷怪談」(1959年)は、映像、
物語ともに完ぺきだと大評判!

今年二月に映画専門誌「キネマ旬報」で国内外ホラー映画のベスト・テンを発表したと
き、一位になったほどです。

中川監督が描き出す映像は幻想的で美しい世界。

「東海道四谷怪談」で鈴木さんが特に気に入っているのは、「髪をすくシーン」です「顔ご
しにお岩の美しい顔を、まず、左側から映し、じょじょに右側へ移ると・・・・・毒でくずれた
顔が見えてくる。その”間”というものがすごい」と、心理的に観客をこわがらせる手段を
絶賛します。

かずかずの名場面は、CG(コンピューターグラフィックス)を一切使っていません。
だからこそ、真にせまる恐怖が観客をおそうのでしょう。



★中川信夫監督★
1905年に京都で生まれました(84年没)。生涯で監督した97本の作品のなか、
怪談ものはごく一部。時代活劇や喜劇、社会劇、文芸物など幅広い作品があります。

『ぼくは幽霊やお化けは信じないよ。一番こわいのは人間だ』とよく言っていた監督の
作品テーマは、人間の欲望が生み出す”業”(抑えきれない心の働き)。

そうした”人の心のこわさ”だけではなく、慈愛も描き、”救い”も表現するのが特ちょう
です。中川版「東海道四谷怪談」も、そこはしっかりとおさえていますよ。

★鈴木健介さんのプロフィル★
1939年東京生まれ。66年、中川信夫監督の助監督につき、以後師事する。
82年には中川監督の遺作「生きてゐる小平次」の助監督をつとめる。
94年、映画「ガンガー 俵万智イン・カルカッタ」ほかTVドキュメンタリー
番組などを監督。現在、劇映画準備中!

府川恵子 (毎日小学生新聞)

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中川信夫生誕100年
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