生誕100年を記念して開かれた
「酒豆忌」に参加された100余名の皆さんを迎えた100歳の中川信夫
鈴木健介
先日、7月19日、東京国立近代美術館フイルムセンター内で66年前の作品『新編
丹下左膳 隻眼の巻』を上映後、「酒豆忌」を行いました。
「酒豆忌」の忌名は中川監督がこよなく愛し飲食していた「酒」と豆腐の「豆」
に因んでつけられたものです。
当日は参加された映画を学ぶ学生さん、中川監督縁の皆さん、そして中川ファン
の皆さんといった幅ひろい方々を中川監督ご自身がお迎えいたしました。
中川さんはお盆の7月13日、あちらの世界から、戻ってまいりました。そして、
16日にはあちらへお帰りにならなければ、ならなかったのですが、「17日」は命
日(6月17日)の日だから、「18日」は誕生(4月18日)の日だしね、19日には
皆さんにお集まりいただくのだから、ご挨拶をして行きたいとおっしゃられ、お
盆の決まりを破って残られたという訳です。
「お前はいいヤツだ」と言っては、いつもの調子で出席された皆さんの頭を拳固
でコツン、コツンと叩きまわっていたようです。
中川組は撮影が終わると宴会が始まるのが常。宴たけなわになると気に入った人
の頭を叩いていく。時には頭から酒の洗礼を受ける。中川流の愛情表現である。
中川組の宴会にはヘルメットをかぶり、合羽を着ていかないといけないなどと、
にこやかにスタッフ間で言い交わされていました。
「酒豆忌」はフイルムセンターを統括する文化庁の寺脇研部長の挨拶、シナリオ
ライターの宮川一郎さんの幹事代表挨拶、そして中川組の女優、若杉嘉津子さん
、北沢典子さん、矢代京子さんの三人での献杯でなく、乾杯の音頭によって始ま
りました。
歓談する声が、会場内に響き渡り、うるさいというより、生き生きと交わされる
会話の心地よい響きがあり、中川さんも満足されていたことでしょう。そして、
あちらへと帰っていかれました。
このときの感想を機会があれば、出席された方々に、ここに書いていただこうと
考えています。
二時間という時間は短すぎたようです。名残を惜しみながら、閉会。
二次会へと移っていきました。参加者20数名。また、いくつかの小グループで、
お茶などを飲んでいったようです。
実は、この二次会で24年という月日をへた奇跡が起きたのです。まさに、中川監
督の悪戯としか思えない出来事。そこに居合わせたものたちは、思わず、頭上を
見上げ、「まだ中川さんはいるんだ」と声を発しました。この顛末は、当事者に
書いていただきここに掲載するつもりです。お楽しみに
!!
100歳の映画監督、中川信夫、いまだ健在なりの一日でした。